「語り手が変わっても問題ない?」フィットネスYouTuberが語る情報発信ビジネスとブランディングの未来

最近って本当にいろんなコンテンツがあるじゃないですか。
映像で言えばNetflixとか僕めっちゃ好きなんですけど。音楽であれば、アップルミュージックとかSpotify。
テレビもまだまだ見ている人が結構いて、YouTubeもあって、テキストベースだけどもブログもありますよね。

これらで可処分時間の奪い合いをしている。それをすごく感じていますね。

今回、人気フィットネスYouTuberのKentoさんにお話していただくのは今後の情報発信のあり方とマーケティングについて。
主に栄養やサプリメンテーションについての非常に丁寧で信頼性の高い情報発信で人気のチャンネルは現在(2019年1月)登録者数が2.5万人オーバー。

あえてフィットネス関係のトピックではなくマーケティングについてインタビューさせてもらったのはKentoさんがYouTuberという情報発信者でありながら、NEXTFITというパーソナルトレーニングジム経営、VALUでのオンラインコミュニティの運営、NOTEでの有料テキストコンテンツ発信など様々な分野で非常にユニークなビジネスをされており、そこに筆者が特に興味を惹かれたからである。

須藤健人 (Sudo Kento)
1993年生まれ。
2013年 アメリカ、イギリス、ニュージーランドで本番のフィットネスを学ぶ。
2015年 フリーのパーソナルトレーナーとして、年間200以上のセッションをこなす。
2016年 全米NSCA認定パーソナルトレーナー資格(CPT)を取得。
2017年 6月に「NEXT FIT」を設立し代表となる。
YouTubeチャンネル「NEXT FIT Kento」は2019年1月現在、チャンネル登録者数が25,000人、再生回数は5,300,000回。
本業は書家。20歳で師範をとり、現在週2日で指導をしている。

取材、文 / 池田あゆみ (FutureFitnessFood 運営)
写真 / 石井たいき

今後の情報発信で重要なのは情報の濃さと”学習定着率”

ONE MEDIA. 創業者の明石ガクト氏の本「動画2.0」においても、情報の濃さというのはかなり重要視されている。
IPT(Information per time/時間あたりの情報)という言葉を用いられて解説されているが、要は同じ時間を費やすコンテンツ同士では、獲得できる情報が濃いコンテンツのほうが優位であるということである。

視聴率を維持するために情報を出し惜しみ引き延ばそうとするTV番組に足して、15秒で一つのコンテンツが終わるInstagramのストーリーズがわかりやすいアンチテーゼになっている。

そもそもの尺の長さで、滞在時間、平均視聴率って結構変わってくるんですけど、僕のYouTubeチャンネルの(視聴者の)滞在時間はかなり長いですね。

30分の動画で50%の滞在率ならば、平均視聴時間は15分。
5分の動画で90%の滞在率ならば、平均視聴時間は4.5分。
どっちかというと、僕は後者のほうが重要なのかと思っています。

時間あたりの情報量がどれだけ濃いかというのも重要だけれども、その情報が視聴者にどれだけ定着するのかっていうのも大切です。

こういった学習の定着率については動画のほうが圧倒的に有利です。

視覚のみしかジャックできないテキストコンテンツに対して、動画であれば視覚と聴覚どちらもジャックすることができるので比較的学習定着率が高くなります。

僕はよく、「ラーニングピラミッド」の話をするんです。
どの勉強方法が一番学習定着率が高いかって考えた時に、座学の勉強はだいたい5-10%ぐらい。
英単語を20単語学習したら、3ヶ月後に覚えているのはうち5%の1つ程度です。

パソコンやスマートフォンで文字を見る方法は座学に近いですね。

それに対して動画、いわゆる視聴覚に訴える学習方法の学習定着率はテキストコンテンツに対して3倍の30-35%ぐらいです。

テキストコンテンツに10分費やすならば動画コンテンツに5分費やした方が、最終的に定着する情報量は動画コンテンツの方が優位であるということだ。
動画コンテンツであり視聴者の滞在時間もかなり長いKentoさんのコンテンツでは、学習効率はかなり高いものになっていることが考えられる。

テキスト、音声、動画。視聴者の生活動線にあっているものを視聴者自身で選択できる環境がベスト

しかし、動画コンテンツでは視覚と聴覚どちらも動員しなければ楽しむことができない。
テキストコンテンツ、つまり視覚のみで情報を得ることになれている読者に、視聴覚どちらも必要とする動画コンテンツをシェアした場合リンクのクリック率が激減することはブロガー界では常識となっている。

—— Kentoさんは動画だけではなくNOTEといったテキストコンテンツも作られていますが、実際のところNOTEへの視聴者の流入はどうでしょうか?

NOTEを作った理由は大きく2つあって、一つは「ちゃんとしたグラフやデータをテキストベースで見たい」って言う人が多かったこと。
そしてもう一つ、これが一番大きな理由ですが、YouTubeでは栄養やフィットネスの情報発信、NOTEではマーケティング論の話、と棲み分けをしているっていうことですね。

ただ、確かに動画に比べてテキストの集客は弱いです。
これは逆も言えて、テキストに慣れている人に動画コンテンツを当ててもあまり視聴者は流れない。
テキストで情報を取る習慣がある人に対して動画コンテンツはその人の生活習慣というか、生活動線に入っていないから情報発信のアプローチとしては最適ではありません。

でもこれは単純に継続して両方出し続けることがいいと思っていて、テキストも動画も、もっと言えば音声なんかのいろんなパターンを用意して、視聴者の生活動線にあっているものを視聴者自身で選択できる環境がベストだと思います。

ゴールによってツールを使い分けることが大切

テキストコンテンツ(ブログ)にするのか、動画にするのか。これは手段(ツール)の違いです。
ゴールに何があるのかにとってどの手段の選択が適しているのかが変わってきます。

僕の場合であればパーソナルトレーナーとして集客したいから顔を出す必要がありました。

お客さんは直接あったこともないトレーナーと今後一緒に活動していくことに不安を感じることが多いので、事前に自分のプロファイルだったり話し方、知識レベルや体つき、その他いろんな情報を事前に提供することはトレーナーとして非常に大切です。

自分のゴールがどこにあるのかでツールを使い分けるのが大切ですね。

自分のキャラクターにリーチしてもらうためには裏表隠さずに全部出すしかない

—— KentoさんはYouTubeを始めとし、Instagram、NOTE、Valuなどの様々なツールで、フィットネス、栄養、マーケティングなどの幅広い情報発信を器用に行われていますよね。
しかし、パーソナルトレーナーとしてのお客さんにマーケティング論などはあまり聞かれたくないのではないでしょうか?

そうですね。多分そういう人が多いと思うんです。
いくつかの顔を持っていて、Aというお客さんに対して見せる顔をBっていうお客さんに見せちゃうと評価が下がってしまうことがあります。

ただ、これって言うのは情報を取りに来ている場合だと思うんですよ。

例えば、マーケティングの情報が欲しい人、フィットネスの情報が欲しい人、数学の公式を習いたい人。それぞれ求めているものが違います。

確かに自分がトレーナーとしての振る舞い方を見せている時にマーケティングの話をしてしまうと、評価が下がってしまうこともありますが、そこは重要じゃないんです。

どこか裏表がある人ってキャラクターを買われているわけじゃなくて、情報を買われているだけ。
これは語り手が変わったとしても情報があれば人はそこに集まります。

そうではなくて、キャラクターにリーチするっていうのが現代のモノの売り方、サービスの提供の方法としてめちゃくちゃ重要だと思っています。

そして自分のキャラクターにリーチしてもらうためには裏表隠さずに全部出すしかないんです。

「語り手が変わったとしても情報さえあれば成り立ってしまう」というのは情報発信者の悩みである。
情報がメインコンテンツの我々は、キャラクターにリーチするようないわゆる「ファンビジネス」というモノに一見近いようでかなり遠い。

普遍的な情報を発信するだけでは他との差別化を図れないからだ。

自分のキャラクターを明確にして差別化を図るっていうのは誰しもが考えることで、僕の場合は栄養学が好きで突き詰めているが、これも語り手が変わったとしても問題なく人が集まるでしょう。

じゃあ一方でInstagramでは哲学や経営論、人生観に触れているのですが、これは人があまり出していない情報です。

栄養学、哲学、経営論、これらを掛け合わせた時に差別化ができるんです。

他には、今はあまり表には出していないんですけど、僕は金融の知識を溜め込んでいるんです。

金融の知識を喋らせたらパーソナルトレーナーのなかでは5本指に入るんじゃないかなぁ。笑

いくつかのキャラクターをかけ合わせていくっていうのが重要ですが、そのためにはまず一点で突き抜ける必要があります。

その人を比喩すると言うか、抽象的に解説する時に自分が解説しなくても第三者にいかに自分のキャラクターを語ってもらうかっていうのがブランディングだと思っているから、そういう意味では自分のキャラクターっていうのはある種複数あったほうがいいのかなって感じますね。

KentoさんはYouTubeで健康発信者として突き抜けた存在だ。
ただそれだけではなく、InstagramやNOTE、VALUではマーケティング論などさらにKentoさんのコアな部分を見ることができる。

—— ファンの動きとしては、YouTubeからInstagramという流れが多いのでしょうか?

そうだと思いますけど、逆のパターンもあります。
InstagramからYouTubeみたいな。

初期のころはInstagramもかなりこだわっていましたから。

ここでは割愛するが、非常に楽しそうにInstagramの攻略法を話してもらった。

フォロワーを”お客さん”と見立て、経営学を用いてSNSを攻略する

—— そういったSNSの攻略法はどこで勉強されましたか?

僕は実績のある人の振る舞いを見て、いい意味でパクって自分のカラーにします。
その中で僕がめちゃくちゃ参考にしている人にゆうこすさんがいます。

彼女は人生の大半をSNSにささげているので、発信を見て勉強しています。

あとは、経営論に興味があったのでそれを応用するような形ですね。
フォロワーをお客さんとして置き換え、オーソドックスな経営ノウハウを用いてどういう戦略を立てれば集客できるのかを考えてやっています。

ランチェスター戦略を用いてマーケットのシェアなどを考えると、Instagramのハッシュタグというマーケットをどう攻めるべきなのかわかります。

SNS発信者だけを追っていても限界があるから、他のノウハウを応用する必要がありますね。

—— なんと言うか、非常にクレバーで戦略的ですね。

これらは僕の中の知的好奇心なんです。
いろんなことを考えているように見られるけど、僕はそれが楽しくてやっているだけだから義務感を感じることも仕事をしている感じもありません。

一日に3時間しか働いていないし、朝起きるのも苦手なんです。笑

これが自分のライフスタイル、生き方としてベストだからそれを選択しているだけなんですよね。

「数字が好きで、FXのチャートを24時間見続けても飽きません。」と笑うKentoさん

仕事として義務感を感じないトピックをなるべく若いうちに見つけ出す必要がある

これを見てくれている人はいかにどうやって数字を伸ばそうか考えてみてくれていると思うんですけど、そもそもゴールや方向性が違う人が結構多いように感じます。

この場合、どこかで義務感という壁が来る。

マリオカートをやっている子供はただひたすらにゴールを目指し続け、コントローラーを離しません。
こういう状況が結構理想で、このマリオカートのゴールのようなトピックが自分のなかでなんなのかっていうのはなるべく早いうちにジャッジする必要があると思います。

ただ、中にはやりたくないことがわからない人も多いのですが、こういう人はやりたいことが突然降ってくると思ってるような気がします。

何もないところから突然スノーボード選手になろうとは思えないわけで、テレビで見て興味を持ったり、現場で経験して好きになっていきます。

こういった経験というか、チャンスに触れる面積は広くしておいたほうがいいですね。

そのために意図的に暇を作る。
他人のリソースを育てるために時間を使うよりは、余裕を持っていろんなことに触れるといいと思います。

自分が何をやるべきか見極めるためにもね。

あとがき

今回、僕とKentoさんのコラボ企画ということで、僕のメディアである当ブログFutureFitnessFoodではKentoさんに発信活動やマーケティングについてインタビューさせていただきました。

KentoさんのメディアであるYouTubeチャンネルでは、僕とKentoさんでヴィーガン栄養について対談させていただきました。

お互い、栄養を専門とした発信者ということで、かなり内容の濃いコンテンツになったんじゃないかと思います。

もしよろしければそちらも覗いてみてください。

KentoさんのSNS
YouTube:NEXT FIT Kento
Instagram:@kento_sudo_21006
Twitter:@sudokeeen